続・みかちゃんねる。

愛媛は今治で活動する劇団『未来演劇Kプロジェクト』主宰、キャデラック・ミカ伝説のブログ「みかちゃんねる」の続編。 劇団の活動&公演情報、コメントしようがない小ネタ、息抜きに息子R(12才)のお弁当とか…。てなわけで、読み逃げ上等!

【旧ブログ「みかちゃんねる。」はコチラから→http://kpro.info/blog/

『セカンド』公演レポ・嵐の千秋楽 ③

…てなわけで開演しました。 いや、力技で開演させました。(笑)

この 「力技(チカラわざ)」 ってのは隠れたKプロのキーワードでもあります。 まー、作品自体の力技というか、多少の矛盾や細かい点は「勢い」で持っていくスタイルです。 見る側には好き嫌いはあるようですが、好きな方(Kプロファンを自称して下さってる方々)には、この「力技」は快感になっているみたいです。

今回の舞台は「作品の力技」だけでなく、「舞台裏の力技」もフル回転だったわけですが…。

本当にいつどうなるか分からない、冒険に出るみたいな心持で幕が上がりました。

まず、プロローグのダンス。 本来は正樹を入れて6人のところを5人で。 正樹はもうフラフラです。 というか、立ってセリフを言うのが精いっぱいの状態。 飛んだり跳ねたりはおろか、座る・階段を上ることもできません…。 というわけで、ダンスでは正樹の動きを即興で私がやりました。 …はい、方向間違えたー!(笑)
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↑(  妖怪人間ベ○の変身シーン プロローグの3人 )

一方、過呼吸を起こしたゆめは何とか舞台に立って動いてます。 ひとまず安心。

動かない右肩はもともと 「ケガをして島にやってくる」 という設定だったんで、最初は違和感なし。 ただ、やっぱりセリフと動きがぎこちない。 正樹だけじゃなく、全員ね。 もうテンパってるんですよ。

正樹の出番のない時は(ほとんど全ての場に出てるんやけど…)、下手(しもて)の楽屋で待機してる接骨医&麻酔医が治療。 主に痛みどめの注射と麻酔注射です。

そして上手(かみて)でスタンバってる私に、序盤でいきなり伝令が…!
「正樹の腕に注射の針が入らん! みかちゃん、とりあえず出て繋いで!!」(←恭子)
…まじですか!?

正樹が出てくるはずの場面で私が舞台に登場して、舞台上の役者は一瞬固まったけど、事情を察したんでしょう、苦し紛れのアドリブで危機を乗り越えました。

そして2度目。 「みかちゃん、また繋いで!」(←やはり恭子)
今度はアラシ(正樹)が出ないと芝居にならない場面です。 私が出たって多少の時間を稼ぐだけ…。 見てる側にも明らかに不自然に映る。  芝居が壊れる。
「注射は中断! 針抜け! 正樹が出な終わりじゃ!」(←キャデラック)
鬼ですね…。 後で正樹に謝ったけど、これは鬼発言です。 そんな鬼に従って舞台に出た正樹。

そして中盤で、麻酔を打てる回数というか、量が限界を迎えました。 あとは這ってもどうしてもやりきるしかない状態になりました。

公演レポ・嵐の千秋楽④(たぶん最後♪)に続く→

『セカンド』公演レポ・嵐の千秋楽 ②

【14:00】
「15時開演にします。」
電話の向こうの恭子と、舞台袖の役者・スタッフとに、私は同時に告げた。

あと30分がんばってみてダメなら、肩が治ろうが治るまいが、その時点で正樹を連れて帰るように念を押した。
それから30分で正樹を舞台に上げる。  正樹なら例え片腕が動かなくても、立派に「アラシ」を演じきるという確信はあった。  そして共演者もスタッフも、どんな状態で正樹が帰ってきても対応できる…いや、しなければならない。  そのための準備に30分。  これが限度だった。

「アナウンスを入れますか?」 とゆうほが言った。
「いや、 私が出る。」  私はマイクを握って客席に出た。 そして観客の前で土下座した。
役者のケガで開演が遅れていること。  開演を15時ににさせて頂くこと。  帰る方にはチケット代をお返しすること。 もし待って頂ける方が一人でもいたら、その方のために精一杯の舞台を上演することを約束した。

情けないことに涙がこぼれた。

「15時開演」 の言葉に会場がざわめいて、私は身を固くした。  しかし次の瞬間、客席から「がんばれ!」という声が聞こえて、そして拍手が起こった。
決して賞賛の拍手じゃなく、情けない私の姿への同情だったのかもしれない。  私はもう一度、深々と額を床に付けた。


それからの1時間、全員がそれぞれに出来る限りのことをやった。
正樹の肩が入って帰ってきたとしても、本来の動きはできない。  必要最小限のセリフの変更。  一番冷静な若(ツナミ役)が覚えなおしを引き受けた。
立ち位置の変更、それに伴う照明、音響きっかけの調整。  翔子と麻衣が、泣きやまない子どもたちを元気づけ、次第に子どもたちも落ち着きを取り戻した。  舞台監督不在の舞台裏はグッピーさんがチェックをした。
開演前にちょっと差し入れを持ってきただけのはずだった人たちも、スタッフに混じって各階を走り回り、後から来るお客さんに説明と謝罪をしてくれた。

この日のために、灼熱の、そして極寒の稽古場で長い期間練習してきた。 嫌なことも辛い出来事も、全員で乗り越えてきた。 『 何としてでも幕を上げる。』  誰もがその瞬間に向かって奔走していた。


【14:30】
今すぐ正樹を連れて帰るよう、恭子に電話した。 正樹はどうしても肩を治して舞台に立ちたいと訴えているらしい。 私は正樹と直に話した。
「すぐに帰って来い! あとのカバーは何とでもなる。 3時に幕を開けれんかったら私はお客さんの前で切腹せないかんのじゃ!」(←武士か!…でもけっこう本気)

正樹は治療を諦めて帰ると約束した。

スタッフが、お茶と差し入れのお菓子を客席に配りに行く。

感受性の強いゆめが、泣き出過ぎて過呼吸を起こす。 他の子役たちは、ゆめを落ち着かせ、いざとなったら自分たちでセリフのフォローをしようと立ち上がった。
「仲間」と「団結」という意味を、子役たちの姿に学んだ。


【14:45】
正樹、恭子、りんが帰って来る。 接骨医と麻酔医も一緒だった。

「私が帰ってきたけん、もう大丈夫!」 舞台監督の笑顔に一同安心する。 実は恭子がいっぱいいっぱいである事は分かっていた。


【14:50】
青白い正樹の顔に舞台化粧を施す。  ドーランを塗ったばかりの正樹の頬を涙が伝った。
りんがガムテープ(笑)でテーピングをする。
医師たちは楽屋で待機。  舞台と同時進行で治療にあたることになった。

 
【14:55】
本ベル~開演アナウンス。教育長による挨拶。
夕方からの職務のため帰ったはずの教育長さんは、実は1階で待ってくれていた。
「皆さん、待っていて下さって本当にありがとうございます。」 観客に向けた教育長さんの言葉が聞こえた。

有り難いことに、帰ったお客さんは殆どいなかった。


【14:53】
私、翔子、真帆が舞台に板付く。3人のダンスでプロローグが始まる。

緞帳が上がる寸前、私たちは無言で拳を揚げ、そっと合わせた。


【15:00】
未来演劇Kプロジェクト10周年記念公演「セカンド ~高ラカニ、軍艦島ノ鐘ヲ鳴ラセ~」 開演。


●公演レポ・嵐の千秋楽③に続く→

『セカンド』公演レポ・嵐の千秋楽 ①

旧ブログに一度は載せて、記事消失した内容ですが、なけなしの記憶を頼りに再度記しておきます。

未来演劇Kプロジェクト10周年記念公演『セカンド ~高ラカニ、軍艦島ノ鐘ヲ鳴ラセ~は、2/28・29の2日間だけの公演だったので、29日が千秋楽でした。 初日の公演のビデオチェックのあと、演出・照明・音響・細かいテンポや立ち位置なんかを手直しし、2日目はより良い舞台を上演する準備は整っていました。

ところが、舞台裏では誰も予期していなかったアクシデントが起こったのです。
以下、時系列で書きますが、多少の前後はあると思います…。


【12:30】
主要キャスト・アラシ役の正樹が転んで右肩を脱臼。 今まで何度か脱臼したことがある正樹。入る時はすぐに入るけど、入らない時はかなり手こずるらしい。 
舞台監督・恭子がすぐに親戚の接骨医に連れていく。 たまたま楽屋にいた医療従事者のりんも同行する。


【13:00】
恭子から、なかなか肩が入らないと電話がある。 電話の向こうから正樹の叫び声が聞こえた。
私は脱臼の経験がないんでその痛みは分からないけど、入らない時は尋常やない位の激痛だそうな…。


【13:15】
「開演を30分遅らせないか?」 再び恭子から電話があった。
「もうちょっとで入りそうなんやけど…」 恭子とりんも、必死で正樹を押さえつけて治療しているらしい。

「30分もお客さんを待たせるわけにはいかん。 15分が限界。」 私は答えた。


【13:30】― 開場 ―
ゆうほが「15分押し」のアナウンスを入れ、スタッフたちが会場の数か所に貼り紙を貼りに行く。
大人たちのただならない様子に、ジュニアから出演している6人(ゆめ、まいな、まほ、あねら、みお、息子R)は不安になり、泣きだす。

同時刻、開演前にお祝いの言葉を頂くことになっていた今治市教育委員会、教育長さんが舞台裏を訪れる。


【13:50】
恭子に電話。 相変わらず正樹の悲痛な声が聞こえる。 「見よるんが辛い…! あと15分じゃムリ。」

公演中止にするか、それとも開演を更に遅らせるか。 15分待たせて、それ以上待って下さいと言えるのか? ほぼ出ずっぱりの正樹の代役は立てられない。 そして正樹は何としても舞台に上がろうとしている。

公演責任者であり、演出である私が決断をしなければならなかった。


●公演レポ・嵐の千秋楽②に続く→
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